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| ■優秀賞■ |
| 『暗闇にヤギをさがして』穂史賀雅也(32歳)東京都 |
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| ■佳作■ |
| 『神様のおきにいり』岡崎新之助(32歳)東京都 |
| ■佳作■ |
| 『World's tale 〜a girl meets the boy〜』矢塚(17歳)東京都 |
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冲方丁先生
「暗闇にヤギを探して」は冒頭に新鮮さを感じた。だが物語と全く関係のない説明や人物の登場があまりに多く、肝心の「ヤギ」の印象が薄れてしまった。主人公が「ヤギ」に関心を持っているのかいないのかも不明なのが辛い。全ての感情描写が唐突になってしまうし、「ヤギ」の正体が明らかになろうとならなかろうと大差のない展開では、冒頭のアイディアが勿体ない。そもそも主人公を通して、何が描きたいのか。一風変わった恋愛か、虚実定かならぬ幻想か、日常の中に点在する不思議な感覚か、漠然と過ぎてゆく思春期の寂しさか。主題を明確にすることで、描写も展開も、もっと上達するはず。またその上で、自分が提示した伏線や謎は、なるべくなら放置せずに書き尽くすこと。アイディアは面白いが、あまりにそれ以外の物事をほったらかしにされては面白さが持続しない。
「神様のお気に入り」は既に一般化した和風ファンタジーをベースにしているが、独自のアイディアも文体もキャラも不在のまま展開してしまっている。読者から受け入れられやすいジャンルである分、よほど工夫しないと他の多くの作品と区別がつけられず、印象に残らないまま読み終えてしまう。タイトルの「お気に入り」が何を意味しているのかを物語上で分からせてくれるなど、焦点を明確にした展開が欲しい。「神様」という存在にまつわる原理原則や掟といったものをもっと詳細に決めた上で、そうした原理に対して人物たちがどう判断し、どう行動するのかでドラマを作るべき。人物に必然がなく、最終的にどのような原理に対して、どのような決意なり宣言なりを行うのかが不明では、盛り上がりに欠け、これまた印象に残らず読み終えてしまう。世界観に関する諸アイディアを、人物と別個に考えず、全て一つのものとして考えることで、もっと盛り上がるはず。
「world's tale」は冒頭に期待を抱く。だが複数の物語が紡ぎ出されていく割には、相互の物語を関係させたいのか、それとも印象を多層にしたいのか、全く関係ないように見えて最終的に驚かせたいのか、といった意図が見えない。一本一本の物語をしっかり描く上で、人物の心情を書き手自身がもっとはっきりつかんで欲しい。行動が唐突に思えてしまうし、その唐突な行動を作品内の人物にフォローさせることで、さらに唐突感を助長してしまっている。物語を複雑にする一方で、核心に据える主題が揺らいでばかりいる印象がある。最終的に提示すべきものを、もっとはっきり、強い感情に裏打ちされたものにすれば、人物も物語も、意味をもって一つの結論へとつながっていくはず。
三作品とも、それぞれ大きく欠けているところがあった。いずれも努力次第で手に入るものだが、努力なくして手に入るものでもない。是非とも今回の結果を契機として、今後の努力の仕方を工夫し、プロへの最短距離を走破して欲しい。
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桑島由一先生
前回は様々な種類の作品が怒涛の勢いでやってきて、審査をするのも大変でしたが、今回は作品数も絞られて比較的余裕を持って検討することができました。審査員の先生方の意見が大きく分かれることはありませんでしたが、これは凄いぞ大賞確実だワーイみたいな感動もありませんでした。せっかく制約のない自由な環境で執筆ができるのですから、既存のライトノベルにはない新鮮な作品を期待してしまいます。アニメ化したら絵になりやすいとか、キャラクタービジネスを考えるとこういうキャラがいた方がいいよね、というものをデビュー前から考えて物語を組み立てることも手段としては間違ってはいませんが、僕はそういった考えに左右されない、デビュー前だからこそ書ける青春の(情熱の)ほとばしりみたいなものが見たいなと思っています(きっと出版社さんや、他の先生からの受けはよくないかもしれませんが……)。
「World's Tale 〜a girl meets the boy〜」は、三作品の中でも一番「若い」印象を受けました。設定はとても面白かったのですが、それを上手く使えていません。文章もどこかぎこちなく読みにくいものだったので、それを克服することで「伝える力」はより強いものになると思います。
「神様のおきにいり」は、一番わかりやすかったと思います。さっぱりとした文章が、とても読みやすくキャラクター配置もツボをおさえていました。ただ、それだけに凡庸さが拭えず、心に残るような箇所もありませんでした。読み終えて、おしまい、という感じだと少し物足りません。健全なお色気シーンだけが心に残りました。
「暗闇にヤギを探して」は独特な雰囲気で好感が持てました。他者との差別化をしようという中に、今日的な要素も入っていてよかったです。しかし思わせぶりな「設定」や「物語」が消化不良で終わっている部分もあるので、それは不親切かなと思います。三作品の中で、一番好意的に読ませて頂きました。
僕はプロとしてはあるまじきレベルの読解力のなさなので、自分の好みのみで判断させて頂いております。すみませんです。
最後に、僕はこう思います。小説は表現のひとつです。感情の放出です。バランスが良い作品の評価は当然高くなるでしょうし、デビューもしやすいと思います。ですが僕は、もっと心を突き動かすような文章が読みたいです。書きたいことを全力で書いて欲しいです。書きたくないものは書かなくて良いと思います。最近のライトノベルは萌えだべよ、ということで女の子を出す必要はないです。もし萌え萌えな女の子が好きで好きでたまらないのであれば、読んだ瞬間に誰もが興奮して鼻血出して倒れるような女の子を書いて欲しいと思います。本当に表現したいことならば、小説全部が女の子の描写のみでビッシリで構わないと思います。それぐらいの極端な人の方が、見てて面白いです。だっていかにもありそうな設定で、いかにもな小説なんて、本屋さんにいけば山ほど売っているではありませんか。それを書くことが、あなたにとって一体なにになるって言うんです。 |
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榊一郎先生
今回の新人賞は選考候補作が三本という事もあってか、各審査員の意見もあまりばらけず、選考会そのものとしてはあまり迷いの無いものでありました。選考委員の意見がばらけて意見調整が大変だった前回に比べると選考そのものは当初の十分で終了した感が在ります。
逆に言えばそれは、それだけ尖った作品が少なかったという事でもあり、良くも悪くも小粒感が漂うというか、いずれの作品も小さくまとまっているばかりで読み応えに欠ける印象は在りました。
またどの作品も作者が自分の作品のコンセプトやテーマについてあまり掘り下げず、行き当たりばったりで書いている様にも感じました。
無論、こうした傾向は新人賞応募作には大なり小なり見られるものなので、本当の勝負は実の処、ここからという気がします。最終的にこれらの『原石』をどうカッティング(=シェイプアップ)して、どう研磨(=ディティールアップ)するかによって、これらの作品はクズ石にも宝石にも変化しえるでしょう。
現時点では『暗闇にヤギを探して』が基本アイデアの面で一歩先んじている感じなので一段高い評価となっておりますが、出版前の改稿如何によっては他の二作がより面白く仕上がってくる可能性もあると思います。
今後、新人賞に投稿される方々は肝に銘じて欲しいのですが――小手先の細工で勝負するのは、息の長い作家になりたいなら止めた方が良いと思います。
既に何百、あるいは何千とライトノベルが存在する中で、単純にガジェットを一つや二つ入れ替えただけでは、新しいものは書けませんし、ましてや面白くはなりません。
またそういう小手先の技術ならば、既に多数存在するプロ作家の中に経験豊富で上手い方が何人も居られる訳で――わざわざ新人をデビューさせる意味は、業界的にも出版社的にもあまり無いのです。
ガジェット一つを捻るよりも、自分の作品のテーマやコンセプトをじっくり煮詰めてください。自分が何の為にその物語を書くのか、書いた上で何を主張するのか――そういった事を考えずに書かれた作品はやはり薄っぺらいものにならざるを得ません。
例えば吸血鬼を扱うなら、登場人物をただ吸血鬼にするだけでなく、『吸血鬼だからこそ有り得るドラマや登場人物の在り方』をじっくり考えてから書いた方が、より深く印象に残る物語になる筈です。
テーマにしてもコンセプトにしてもそれについて一家言持てる程に自分の中で練り込んでから書いてください。そうすればそこには貴方しか書けない何かがきっと在る筈です。 |
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清水マリコ先生
さみしかったです。最終選考に残った作品が三作と、前回の半分以下だった上、三作ともに、突き抜けたものを感じられませんでした。まず「World's Tale」は、幼いなりに恋愛と向き合い、ドラマを語ろうとする姿勢はよかったものの、小説表現を勘違いした文章が多くて読みづらい。逆に「神様のおきにいり」は、文は書けているしキャラもわかりやすいけれど、ドラマを盛りあげるための緩急や演出が出来ていなくて、読んだあとに残るものがとても薄い。「暗闇にヤギを探して」は、三作のなかでは文章も読みやすく、淡々とした演出も感じられました。が、やはり、読者を楽しませるポイントや、読ませどころの把握が甘く、構図はとれてもピントのぼけた写真のようです。結果「暗闇〜」が優秀賞になりましたが、個人的には、今回は、入選なしでもよかったように思います。
そして、全体に、作品から伝わる熱意も足りない感触でした。本気でこれを書きたくて書いたのか、あるいはちょっと思いついたからネタにしてみただけなのか、わからない。とりあえず、ソツなく格好よくまとめ、よかったら使ってみてください、勉強する気はありますんでよろしくみたいな、こぢんまり感が悲しいです。その点、作者の若さもあって、結果を怖れず書いている「World's Tale」は、比較的高く評価できました。それしかなかったとも言えますが……。
もしかして、MF文庫Jというレーベルが、クリアーできれいにまとまっていて、ラブコメ+チラ見せの萌え入れとけばOKみたいな、軽いイメージなんでしょうか。
それが当たっているかどうかはともかく(笑)、定番を軽くソツなくこなすのは、ある程度のキャリアと実力があってこそです。デビュー前から「使いやすさ」を売りにするようでは、あとが続きません。新人賞は入学試験とは違います。応募一作で作家としての合否を判定するのではなく、この一作を書く人が、この先どれだけ伸びていけるか、読者を楽しませていけるかを見るわけです。なので、これは自分の経験からくる考えですが、創作以前に、業界の研究、分析に熱心になる人は、新人としては不利といえます。分析は必ず自分に及び、自分の可能性が見えてしまい、みずからを削って小さくまとまってしまうからです。あるいは逆に、耳年増になり作家の自意識だけが先走り、理想と現実(実力)のギャップに苦しみ、結局書けなくなってしまうのです。
小説を書く上で必要なのは、業界だなんだの周囲より、まず自分自身としっかり向き合い、自分の中にあるものを知ることです。自分の中に何もなければ、そんな自分を信じられなければ、そのままそれを書けばいい。きれい事に聞こえるかもしれませんが、とりあえず私は、きれい事をずっと信じ続けて、こうして偉そうなことを言っています。でも少数派かもしれないので(笑)、もっと私と同類の、計算が苦手な仲間がほしい。現実なんて忘れるような、熱く可愛い、かっこいい、物語オンリーの情熱に打ち負かされて、生意気いってすみませんでしたと言いたいです。みなさんの挑戦を待っています。 |
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該当作なし |
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| 『暗闇にヤギをさがして』 穂史賀雅也 |
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公園の砂場で遊んでいると、なぜか砂場から大判小判がザックザック出てくる。呆然としていたら、偉い人達が大勢やって来て、その人達に「それ全部君のものだから持って帰っていいよ」と言われて戸惑っている。現在の心境を言葉にするとこんな感じでしょうか。最初に編集部の方から連絡頂いた時に「またまた冗談キツイですよー、ハハハ」と口走りそうになったのは内緒です。
頂いた賞の名に恥じない作品を作っていこうと思いますので、今後ともよろしくお願いします。 |
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ほのぼのした不思議系の作品。題名や粗筋からも判る様に、独特の味わいは在ります。しかし何も解決せずに投げっ放しのラスト、相互に存在意義が絡まない上に唐突な設定や、登場人物の作り込みの甘さなど、問題点は山積み。未だ未だ細かい部分が拙い印象でした。
ただ全体的に破綻なくまとまっており、作者が目指したものが見え易い作品。それはつまり適切な改稿を施されれば、どれだけ面白くなるのかも分かり易いという事です。作品の持つポテンシャルは最終選考に残った三作品の中で最も高いと感じました。『ラストのエピソード追加を含めきちんと改稿する』事を条件の受賞でありますが、期待が持てる作品と考えます。(榊一郎先生) |
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| 『神様のおきにいり』 岡崎新之助 |
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長い間、ずっと小説を書き続けてきました。
受賞の知らせをいただいたとき、ようやくこれでスタート地点に立つことができたとホッとすると同時に、いままで見えていたスタート地点の代わりに、今度は形の無いゴールをずっと目指していくのだということを実感しました。
そんな私の最初の一歩目の小説を是非ご期待ください。 |
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| 文章がさっぱりしていて読みやすく、テンポもよかったと思います。色々な種類のキャラクターの配置も、今日的でわかりやすかったです。しかし、全てがどこかで見たような印象でしかなく、目新しさがありませんでした。この作品を通して、なにを伝えたいかというメッセージのようなものも伝わってこなかったので残念です。(桑島由一先生) |
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| 『World's tale 〜a girl meets the boy〜』 矢塚 |
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| みなさん、はじめまして。矢塚です。今回このような賞をいただき、まことに光栄の極みです。実を言うとこうしてる今も受賞したという実感がわかず、担当のSさんが顔の皮をはいで「ガハハハハ!! いい夢みしてやったんだからさぁ払ってもらうもん払ってもらおうか!」と言い出したときのシュミレートを頭で繰り返してしまっているわけです。しかし、もしこれがみなさんの目に触れているのならば、そろそろ信じてもいい頃です。こんな拙い話に目をかけてくださったMF文庫J編集部の方々、そしてこの本の出版にご尽力くださった方々、まことにありがとうございます。今後もこの拙い頭で少しでも楽しい物語を紡いでいきたいと思っております。 |
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| 気恥ずかしい設定、ベタすぎる恋愛絡みの場面。表現を無駄に凝るわりに本来語るべき部分は書けていない。とにかく幼すぎ。など、問題点は山積みの作品ですが、読み手に媚びず書きたいことから逃げずに書く姿勢には好感が持てました。拙いながら、演出を意識している点も良かったです。個人的には気恥ずかしい勘違い世界は嫌いじゃないです。(清水マリコ先生) |
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| 残念ながら第2回の新人賞は前回と異なり、そもそもの予備審査通過作品が少なかった。投稿数は増加し、一定の完成度を持つ作品が多い反面、突出して優秀な作品、荒削りだが新鮮な作品が乏しいという状況であった。キャラクター性や物語性、オリジナリティに秀でた3作品が最終選考に残ったが、最優秀賞については該当なし、独特の雰囲気と魅力を備えていた『暗闇にヤギを探して』が優秀賞、という結果となった。相対評価ではなく、選考委員が作品そのものの力を充分に検討された上での結論であり、編集部としても異論の余地は無い。次回は選考委員、ひいては読者を驚かせるような新鮮で力強い魅力のある作品が現れ、最優秀賞を獲得することを切に期待したい。 |
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