MF文庫J ライトノベル新人賞

出身作家インタビュー

MF文庫Jライトノベル新人賞に応募し、受賞してデビューした作家さんに、「新人賞に応募しよう」と思ってから実際に執筆し、応募し、受賞し、そして今プロと活躍するまでのお話を伺いました。
第一線で活躍する憧れの作家さんはどのような経験をしたのか、貴重なお話を聞いて、先輩たちにキミもつづけ!

インタビュー 第6回田口 一第3回 佳作 受賞

突然編集部からのメールがあって、「は?」

とにかく最後まで書き上げることの大事さ

応募当時、ライトノベル新人賞で応募作全部に講評がもらえるというのは他に無かったと思いますので、それが一つのきっかけです。自分の場合は応募作を家族や友人に見せることもありませんでしたので、何かしらの反応があるのは、それだけで魅力的に感じられました。実際には講評で下の方の点がつけられてヘコむわけですが……。

それともう一つは、結果発表が四か月毎ということでした。やはり投稿した後はヤキモキとした気分で待ち続けるので、早めに結果がわかるのは嬉しかったですね。

投稿時は明確に何かを心がけていたわけではないのですが、強いて言うなら、とにかく最後まで書き上げるということでしょうか。実際、小説を書く上で、まずはそれが一番大変かなと思いますので。ただ一作でも書き上げると、次からは完成させるのが少し楽になる気がします。

モチベーションを維持する方法

当時は既に働いていましたので、仕事の合間に少しずつ書き進めていました。元々、高校生のころに趣味で小説を書いていた時期はあるのですが、その後しばらく離れていて、仕事が一段落したころにふと思い立って再び書き始めました。僕は投稿仲間などもいませんでしたし、原稿を誰かに見せもせず、ひたすら一人で黙々と書いていました。

このインタビューの第5回までを先に読ませていただいたのですが、皆さん学生時代の話が出てきて若々しいですよね。僕の場合、卒業までにデビューしたいというような区切りは無かったので、そうした焦りはありませんでしたが、反面、いつまで投稿生活を続ければいいのかな、という不安みたいなものは漠然と感じました。そうなるとモチベーションの維持が大変になるのですが、「落選したら自分で発表しようか」とか「今後の創作に何かの形で生かせるかも」と、書いたものが無駄にならないようにと考えることでモチベーションを保っていました。

そのころ小説を書き始めた動機は、とにかく何かを創作して形にしたいという思いがあったからなのですが、具体的に何を描きたいのか、どうしてそれを描きたいと思うのか、それは自分でも明確にわからないもの でした。なので思い付いたアイディアを書いていくわけですが、思い通りにならず苦しい反面、それまで自分自身でも思い付かなかったイメージが飛び出したときはやっぱり楽しいですね。試行錯誤は苦しいのですが、後から思えば、そのときにしか味わえない面白さもあるように思います。

あれは心臓に悪い

受賞の知らせを受けたときは、嬉しさよりもまず最初に呆気に取られたような、不意打ちを食らった気分がしました。僕の場合はメールで連絡をもらったのですが、いつもどおりパソコンの前でダラダラとネットを見ていたら突然編集部からのメールがあって、「は?」という感じでした。あれは心臓に悪いので、「明日受賞の知らせが行くよ」という予告を知らせてくれるといいんじゃないかと思います。……それじゃ無意味ですか?

受賞の知らせを受けて 、編集長と担当さんとの顔合わせのため編集部に伺ったのですが、社会人らしくきっちりスーツを着こんで意気揚々と出向いたところ、「えっ、わざわざスーツで来たの?」みたいな顔をされてしまいました……。あ、もちろん食事までごちそうになって嬉しかったですよ!

新人賞の賞金でプリンターを買いました。いつも一通り書き上げたあと紙に印刷して文章をチェックするので、一度に百枚以上印刷できるものを選んだのです。A4一枚に二ページ分ずつ印刷するので百何十枚かになるわけですね。それまで持っていたプリンターは給紙枚数が少なく、手差しで一枚ずつ印刷していたので、だいぶ楽になりました。その機種は最近壊れてしまったので、現在は二台目を使っていますが、やはり似たようなタイプの機種を購入しています。

結局書き続ける限りずっと続く問題

受賞作の『魔女ルミカの赤い糸』は、とにかく妖しく淫靡でサドっ気のある女の子を描きたいなあ、と。こだわりというか、その勢いだけで書いていた気もしますが(笑)。

受賞から今までに四シリーズ、ノベライズ作品を含めて五シリーズ書いてきて、『この中に1人、妹がいる!』ではメディアミックスなどにも恵まれましたが、新作の案を練るときの大変さはさほど変わらないですね。自分が描きたいものは何れをどう表現するかというのは、結局書き続ける限りずっと続く問題かなという気がします。

自分の作品を客観的に捉える機会

投稿を続けていると、どうしても精神的に孤独になりがちです。それでも先に読者がいるのだと信じて、彼らに伝えたり、あるいはぶつけたりするつもりで作品を書いていくことが大切かと思います。MF文庫J新人賞では比較的早く結果と講評を得られますので、講評はわりと厳しめの評価に感じられることも多いでしょうが、自分の作品を客観的に捉える機会として活用していただければと思います。

プロフィール
田口 一(たぐち・はじめ)
2007年、第3回MF文庫Jライトノベル新人賞にて、『魔女ルミカの赤い糸』で佳作を受賞しデビュー。4シリーズ目の『この中に1人、妹がいる!』が話題となり、数多くのメディアミックスを果たして大ブレイク。
近作に『Classroom☆Crisis』のノベライズを手掛ける。