MF文庫J ライトノベル新人賞

出身作家インタビュー

MF文庫Jライトノベル新人賞に応募し、受賞してデビューした作家さんに、「新人賞に応募しよう」と思ってから実際に執筆し、応募し、受賞し、そして今プロと活躍するまでのお話を伺いました。
第一線で活躍する憧れの作家さんはどのような経験をしたのか、貴重なお話を聞いて、先輩たちにキミもつづけ!

蟲と眼球とテディベア

インタビュー 第4回日日日第1回 編集長特別賞 受賞

MF文庫Jが教えてくれた
「書きたいものを書いていいんだ」

自分が今どのへんにいるのか探るために

きっかけは、ネットを見てて新人賞を、とくに「長編」「ジャンルは問わない」という方向で募集していたのはライトノベルレーベルばかりだったんですよ。おまけに今となっては珍しくない「評価シート」をつけてくれたのは当時はMF文庫Jだけで、投稿し始めたばかりでしたし、それまではずっと部屋にこもって誰にも読まれない原稿をアホみたいに生産してただけだったので、腕試し……自分が今どのへんにいるのか探るために~だったかなあ?(うろ覚え)

あのころはパソコンで小説を書くことを覚えたばかりで(それまでは原稿用紙に手書きでした)、自分で書いた文章が印刷すると本屋さんで売ってるのと同じ「活字」になるのが面白くて嬉しくて、そんな比較的どうでもいいことも含めて何もかもただただ楽しくて、つまりまぁたぶん何も考えてませんでした。新しい玩具を与えられた子供でした。

ちゃんと勉強しなさいよ受験生

ちょうど高校三年生、受験生でした。学校に通いながら、部活をしながら……。夏休みに父からおさがりのパソコンをもらって、これ幸いと夢中になって原稿どんどん書いてどんどん送って~という、ちゃんと勉強しなさいよ受験生って感じの生活状況でございました。

当時は受験生でしたので、やっぱり両親に反対されたのがいちばん苦しかったです。「小説家では食べていけないよ」って、すごく常識的な意見なんですけど、当時の僕は社会のこと仕事のこと未来のこと何にも考えられなかった子供だったので(高校生ですし)猛反発して、喧嘩ばっかりしてました。

その後、アホみたいにたくさん新人賞をとったら父が母を説得してくれまして、「二十歳までに『こりゃ駄目だ』と思ったらすっぱり諦めて、あらためて大学受験をしなさい」って約束で自由にさせてくれました。それが嬉しかったなあ……。楽しかったことはとくにないです毎日もう両親と口論したり暴れたり、すっごい反抗期でしたから。

いきなり叩き込まれた大人社会で

受賞はもちろん天にものぼるほど嬉しくはあったのですけど、その時点でもう他社で四つぐらい新人賞の受賞が決まっていたので「幸せがひとつ増えたな~、もっと増やしたいな」って思いました。幸せの中毒になっていたのでしょうね、名前は伏せますがある会社の偉いひとに呼びだされて「おちつけ」みたいなこと言われてしまい、それ以降は受賞を辞退しました(まだ他社の新人賞に投稿しつづけてたんですよ、猿のように)。

他社の担当編集さんがすごく真面目で厳しく、高校生だった僕をつぶさないよう慎重に気をつけて接してくれた(両親と定期的に面談したり)のに対し、MF文庫Jの担当編集さんは良い意味でテキトーで、喫茶店とかで馬鹿な話をするだけでぜんぜん「仕事」って感じでもなく、いきなり叩きこまれた大人社会にがちがちに緊張してた僕はすごく救われていました。あぁ仕事しない大人もいるんだ、こんなにテキトーでもいいんだチョロいじゃん大人社会なんか~って(*褒めてますよ)。

一日で自由になる時間が五分ぐらい

受賞作が発売されたころ、専門学校にも通っていたうえにいきなりライトノベルだけでも3シリーズ同時並行でどんどん休みなく書くことになって(一日で自由になる時間が五分間ぐらいで、学校への行き帰りに大学ノートを電車の壁に押しつけてゴリゴリ書いたりしてた)感慨にふける余裕もなかったです。あんまり何も覚えてません。あっ、高校の卒業式でたくさんの女の子に取り囲まれて「サインください~♪」って言われたのだけは生涯たぶん二度とないたぐいの良い思い出ですね!

とにかく担当編集さんが他社にくらべてぜんぜん働いてくれない、耳触りのいい表現をすると自由にさせてくれるひとだったので、自分の書きたいもの好きなものをぎゅうぎゅう詰めにできてたいへん大満足&嬉しかったのです。MF文庫Jでそういう経験をさせてもらえなければ、どこかの瞬間に「仕事で原稿を書く」ことに嫌気がさしていたかもしれないです。

今も昔も、アマチュア時代もデビュー後も、受賞作も代表作もぜんぶぜんぶMF文庫Jが教えてくれた「書きたいものを書いていいんだ」という考えのもとでいつでも楽しく原稿を書いておりますよ。

原稿を書くのは楽しいのです愛なのです!

MF文庫Jではもう何年も働いてないので僕の知っている時代と現在では雰囲気ちがうかもしれないですけど、とりあえず仕事だ~って肩肘張らなくても、原稿を書くことって大変だ怖いんだって不安にならなくても、受賞しなくちゃ~売れなくちゃ死んじゃうんだ~って思いつめなくても大丈夫みたいなので、書きたいものを書きましょう! すごく楽しいですよ~! メリットとかそういうちょこざいなことは屁のつっぱりにもなりませんよ、とにかく原稿を書くのは楽しいのです愛なのです! すべての創作するかたにその喜びが訪れますように! できれば「日日日のコメントを読んで応募してみようかなって思った」とか言ってくれるとこんな内容でも今回のインタビューにMF文庫Jが謝礼を払ってくれる気がしますのでよろしくお願いしますね!(何)

プロフィール
日日日(あきら)
2005年、第1回MF文庫Jライトノベル新人賞にて『蟲と眼球とテディベア』で編集長特別賞を受賞。複数の新人賞を受賞してのデビューが話題となる。『蟲と眼球』シリーズをはじめ、『狂乱家族日記』(ファミ通文庫)、『ささみさん@がんばらない』(ガガガ文庫)などメディアミックス作品多数。第6回~第8回までMF文庫Jライトノベル新人賞の審査員を務めた。
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